2011年5月21日土曜日

「ほかしのおーじさま」――むかしあって、これからもおこるおはなし

 日経平均が12000円から18000円まで上昇し、久々の好景気に誰もが一攫千金を狙い、起業ブームに沸いたとある時分、フエーテルという起業家がおりました。フエーテルはお金が大好きでいつもお金を稼ぐことばかりを考えている若者でした。

 フエーテルは脱サラ起業して事業を大きくし、自分の資産を増やそうとしていたのですが、なかなか事業がうまく回りません。そんなとき、フルレ?バレッジという伯父様が、どんな事業でも大もうけしていると聞き、会いに行くことにしました。

●何でもかんでも投資しなさい

 経営コンサルタントでカリスマのバレッジさんは、その事業手法にあやかろうと多くの人がアドバイスを聞きたがっている有名人でしたが、何の予約もなく突然訪れたフエーテルにも、きさくに会って、いろいろと教えてくれました。

「フエーテルくん、事業で成功したかったら、全力で投資するんですよ」

「銀行と良い関係を作って、資本金の何十倍もお金を借りて、気に入った事業に投資しまくれば、誰だって僕のようにお金持ちになれるよ」

「まだまだ上がる事業は不動産関連、つまり家やビルに関連する会社とその周辺事業、家具だったり、家電だったりだね。今ならダヴァイ*1なんかで事業をするのがオススメだね。あの国は今も、そしてこれからもすごいいきおいで成長するのは間違いないからね」

 初めて会った自分に対してこんな親切に教えてくれるバレッジさんに感激したフエーテルは、あっという間にバレッジさんのファンになってしまいました。そしてバレッジさんが発行する月50万円の投資レポートとアドバイス権を購入することに決めました。月50万円は大金でしたが、これから稼ぐ金額に比べれば大したことない、そう言い聞かせて、フエーテルはバレッジさんとアドバイス契約をしました。

 契約を結んだフエーテルの元には毎月、バレッジさんの世界動向分析レポートが届きます。そこには以前バレッジさんが勧めてくれた事業に関する情報がたくさん載っていました。レポートにはいい話がたくさん載っていて、読めば読むほど勧められた事業はこれから有望な気がしてきます。

*1 ロシア語で「行け!」の意味を持ちます。イケイケドンドンの結果はみなさんも知る通りです。決して砂上の楼閣って意味だったよねとか口走ってはいけません。

●きれいなバラにはとげがある

 特にアキール*2というダヴァイ政府系の不動産開発会社がすごい建物をどんどん立てる計画はひときわ魅力的でした。

 ブルジュ?ダヴァイという世界一高い超高層ビル、ダヴァイランドという名の世界最大のテーマパーク、ハイトクポリスという世界初の水中ホテル*3、The NINE PLANETS(ザ?ナインプラネッツ)という太陽系の惑星をモチーフにした9つの人工島を作る計画などなど。

 そういった壮大な計画を聞いたフエーテルは、自分もそこで一山当てたいと、いてもたってもいられなくなり、銀行からお金を借りてそれらの事業に積極的に投資することにしました。しかしフエーテルが事業に携わってからしばらくすると、それまで右肩上がりだった売り上げが下がり始めました。不安に思ったフエーテルはバレッジさんに相談しました。

 するとバレッジさんは、「たまたま調子が悪いだけだよ。むしろ同業が苦しい今こそ頑張り時だ。フエーテルさん、どんどん事業資金を借りて、同業を駆逐するべきだよ」と言います。

 そういわれたフエーテルは、銀行に相談してバレッジさんオススメの事業に再投資を積み増していきました。でも、売り上げは全然下げ止まりません。むしろ下げるペースがどんどん速まっていく有様です。

 フエーテルは、バレッジさんの言葉を信じて、延々と資金をつぎ込んでいきましたが、ついに銀行から借りられなくなり、それどころか銀行から借りたお金も返せなくなってしまいました。すると、銀行は債務の返済にあてるため、フエーテルの持っていた事業を差し押さえ、売り払ってしまいました。

 ちょうどそのころ、フエーテルと同じように、バレッジさんに相談していたほかの事業家も銀行に事業を差し押さえられ、倒産が多発。 連鎖倒産でダヴァイの経済は大混乱。経済水域はどんどん下がって、いつ下げ止まるか分からない大恐慌状態です。

 その余波でブルジュ?ダヴァイの世界一高い超高層ビル計画は基礎だけ建てたところで工事が無期限中止。 造りかけのビルはまるでダヴァイの墓標のように、世界最大のテーマパークになるはずのダヴァイランドの敷地は世界最大の空き地に、ハイトクポリスは世界初の水中ホテルのはずが世界初の巨大な魚礁に、The NINE PLANETS(ザ?ナインプラネッツ)という太陽系の惑星をモチーフにした9つの人工島を造る計画は、島を造ったところで工事が無期限中止になり、いつのまにか波の浸食で島がなくなってしまいました。

 バレッジさんのいうことは、まったくあてにならないと文句を言いに行ったフエーテルでしたが、すでにバレッジさんは行方知れず。風のうわさによると、本人も事業で大損して、せっかく積み上げた財産をすべてなくしたどころか、莫大な負債を被って破産してしまったということでした。

 フエーテルの元には、伯父様のまったく当てにならなかったレポートだけがただ残りましたとさ。

 今日も誰かがフエーテル、因果の歴史がまた1ページ…。

*2 お金が借りられなくなって仕事に飽きてしまったのは残念です。
*3 背徳ポリスじゃないですよ、念のため。でも富豪が美女を囲むための場所なんだろうけど。

●グリーム婆さんのよく分かる説明

 今回の話はまーったくの架空の話なんじゃが、まーったくよくある話なんじゃよ。バレッジさんは、フエーテルに損をさせようという気はなかったんじゃが、自分もフエーテルも大損してしまったのう。

 その理由はたまたま事業が成功したのを、バレッジさんは自分の実力と勘違いしてしまったことがすべてじゃ。

 これを春夏秋冬が2年おきに巡る星の話でたとえてみるとじゃな、ある男が冬の間から、そのうち暖かくなるぞといっていたんじゃが、なかなか暖かくならないので皆からうそつき呼ばわりされておった。ところが2年経つと、本当にだんだんと暖かくなってきた。はじめは皆半信半疑だったんじゃが、ついに夏になると皆が男はすごい、未来が分かるすごいやつだと褒めたたえるようになった。

 皆は男の言うことを無条件で信じるようになったんじゃ。そして、秋。少し寒くなっても、男はまたすぐ暖かくなるから冬服はいらないと周りの人間に言っていた。だが、暖かくなるどころか、本格的な冬が来て、男もその取り巻きも皆凍え死んでしまったとさ。

 どうじゃろう、バレッジさんとフエーテルの話に似ておらんか? どんなやり方でもたまたまうまくいくことはあるんじゃ。ただ、ずっと成果を出せるやり方は本当に少ないんじゃよ。

 だから、事業コンサルタントにだまされたくなかったら、最低でも5年、理想は10年以上成功し続けている人に聞くことじゃ。たかだか2?3年ぽっと出で成功した人はまぐれかもしれんからのう。

●グリーム婆さんの悪知恵袋

ぼかした予言が偶然当たったら、それを大々的に宣伝して信者を獲得。そこからお金をしぼり取れ!

 最後に。

 モノガタリを読んでいただきありがとうございます。いかがだったでしょうか?

 今回の話は皆さんの前によく現れるコンサルタントという人たちや企業の一端を物語にしてみました。父はわたしが子どものころに会社を立ち上げて、10数年、会社を経営してきました。その中でコンサルタントに経営相談をして何の役にも立たなかったという話を何回か耳にしたのが今回の執筆動機の1つです。

 今回のモノガタリを読んで、そんなに分析やら経済状況が見通せるなら、なぜ自分で事業を興して、そのノウハウを独り占めしないのだろうか、という疑問を抱くきっかけになれば幸いです。【マネー?ヘッタ?チャン(作家)】

(ITmedia エグゼクティブ)

引用元:FF11 RMT

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